『ミスト』極限状態での狂気と賛否分かれる衝撃的なエンディング
モダンホラーの帝王、スティーブ・キングの中編小説『霧』を元に、映画オリジナルの衝撃のエンディングで賛否両論を呼んだSFホラー映画『ミスト』。
なお、キング本人はこのエンディングを絶賛した模様。
- 町を包み込む霧の中に、何かがいる
- 未知の怪物よりも怖いもの
- ミセス・カーモディの存在感
- 空回りする主人公デヴィッド
- 思わず共有したい、エンディングを見終わったときの気分
- 出来はいいのだが、悩ましい映画
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町を包み込む霧の中に、何かがいる
主人公デヴィッドが息子のビリー、隣人のノートン弁護士とともにスーパーマーケットで買い物をしていると、いきなり警報が鳴り響く。
そして濃霧がスーパーを覆う直前、鼻血を流した爺さんダンが「人が襲われた。霧の中に何かいる」と叫ぶ。
別のおっさんがその警告を無視して車に乗ろうとするが、彼が霧に包まれた直後に絶叫が聞こえた。
霧の中には何がいるのか。
そもそもこの霧は何なのか。
そしてデヴィッドたちの運命は――。
未知の怪物よりも怖いもの
未知の怪物に襲われる恐怖を描いているが、極限状態での狂気もテーマの一つ。というか、むしろこっちがメインか。
その象徴が嫌でも印象に残る狂信者ミセス・カーモディ。
このおばさんさえいなければ…! そう思わずにはいられないが、間違いなく本作の顔役である。ミストと言ったらエンディングとこのおばさん。
子どもが怖がるからやめてと言われたのに「怯えるべきよ」「生け贄が求められている」などと言い放つアレっぷりを発揮し、スーパーに立てこもった人たちのSAN値を積極的に削っていくという暴挙大活躍をする。なんてことしやがる。
とはいえ、薬局に向かうデヴィッドたちを危険だからと止めようとする面もある。
ただこれは、デヴィッドたちが外に出て怪物を刺激し、そのせいでスーパーまで襲われたらたまらない、という理由だが。気持ちはわかるけどね。
ミセス・カーモディの存在感
ミセス・カーモディは嫌な奴だが、キャラはめちゃくちゃ立っており、町の人々が彼女の主張に取り込まれていく展開はおぞましくも見事。
自分が視聴者だから彼女を批判できるが、このスーパーにいたら自分も信者になっていたのではないか、と考えてしまうような、笑えない説得力がある。
また、彼女の狂った宗教観や生け贄という名の殺人を煽る言動は置いておき、可能な限りみんなで生き延びようとする面を評価する意見もあるようだ。
デヴィッドは「集団自殺でもやりそう」と言っていたが、作中で描写されている範囲だけを見れば、確かに生き残ることを目標にしていた。
みんな=自分の信者なので、みんなじゃない人には容赦ないが。生け贄には子どもがいい!
空回りする主人公デヴィッド
そんな彼女とは対照的に、デヴィッドは異常事態の中で頑張ってはいるのだが、その頑張りがことごとく空回りする。
説明が下手でノートンを怒らせる、火傷を負ったジョーを助けようとして犠牲者を増やす、など。
愛する息子を守ろう、仲間を助けようと必死に奮闘する姿は応援したくなり、感情移入してしまうのだが……。
思わず共有したい、エンディングを見終わったときの気分
エンディングについては「最期まで諦めるな」というメッセージなのかと思ったが、いろいろと意見が割れているらしい。
語りたいことはあるのだが、まだ見てない人はネタバレなしで見て、見終わった後のあの気分を共有してほしい気持ちもあるので、詳細は伏せておく。
出来はいいのだが、悩ましい映画
本作は出来のいい作品である。
よくできているがゆえに、余計に嫌な気分になるのだが。
気楽に見れる娯楽映画ではなく、いろんな意味で気分が悪くなるが、だからといって見ないのももったいない気がする。
人に薦めたいような、薦められないような、なんともアンビバレントな映画である。
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