マンボウ映画レビュー記

Amazon Prime Videoで見られるホラー映画を中心に、適度にネタバレしつつレビューしています。たまにOVAや小説を取り上げることも。ライブドアブログより移行作業中。

『呪怨 白い老女』は『呪怨』というより『怪談新耳袋』じゃねえか!

呪怨』は、清水崇監督のホラー作品のシリーズ名だ。「アアアアア……」というエッジボイスとともに現れる伽椰子(かやこ)を思い浮かべる人も多いだろう。

呪怨 劇場版

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  • 発売日: 2018/09/14
  • メディア: Prime Video
 

 しかし呪怨とは、作品冒頭で解説される「つよい恨みを抱いて死んだモノの呪い」という意味でもある。つまり設定的な観点から言えば、伽椰子がいなくても成立する話なのだ。視聴者が納得するかは別問題。

実際、『呪怨 白い老女』では、伽椰子は一切出てこない。本作は、伽椰子とは別の人物が撒き散らした呪怨の物語なのだ。

個人的には本家『呪怨』のような、ホラーの皮被ったシュールギャグを期待していたが、本作は一応ホラーであろうと頑張ってはいた。でも『呪怨』なんだから、もっとバンバン幽霊出せよ! シリアスな笑いをよこせ!

ていうかこれ、呪怨』じゃなくって『怪談新耳袋』じゃねえか!

 


呪怨 白い老女(プレビュー)

 

 

あらすじ

行方不明になったタクシー運転手。錯乱し、恋人を刺殺してしまう青年。学校のトイレで小学生の姿を目撃した女子高生。

彼らに起こった異常は、とある一家の惨殺事件がすべての元凶。意図せず一家に近寄ってしまったために、呪いに巻き込まれてしまったのだ。

 

新たな呪怨が生み出した白い老女

先述のとおり、本作に伽椰子(かやこ)は出てこない。本作の目玉となる悪霊は、タイトルにもある白い老女だ。

呪怨 白い老女

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  • 発売日: 2018/01/01
  • メディア: Prime Video
 

 白い服とバスケットボール、そして顔芸じみた白塗りの表情が特徴である。ビジュアルだけなら、伽椰子とタメを張れるインパクトがあると思う。

彼女も生前は1人の人間だった。彼女を悪霊にしたのは、孫の篤(あつし)だ。篤は老女を含めた家族5人を惨殺し、その後に首を吊って自殺している。

この篤と、老女もといおばあちゃんなのだが、生前は非常に気持ち悪い人物として描かれている。

篤は母親違いの妹・未来に、どうやら性的なあれこれをしているっぽい。未来の髪の匂いを嗅ぐシーンは、本当に気持ち悪い。

しかし、上には上がいる。それがおばあちゃんだ。おばあちゃんはボケており、篤に自分の胸を触らせてヨガるのだ。誰得。

 

本家『呪怨』から俊雄がゲスト出演

伽椰子(かやこ)は出ないが、本家『呪怨』から俊雄がゲスト出演する。といっても、話の本筋には全く関わらず、ファンサービスとしてちょっと姿を見せるだけだが。

肝心の登場シーンは、犬のオモチャに向かってニャーニャー鳴くという、よくわからない短いものだ。正直わざわざ入れる必要はないとは思うが、篤とおばあちゃんの気持ち悪いシーンの後もあり、なんだか微笑ましい。

でも微笑ましい悪霊ってどうなの?

 

主役ポジションのあかねと犠牲者たち

悪霊としての目玉は白い老女だが、人間側にも主役ポジションの人物がいる。それがあかねだ。あかねは行方不明になったタクシー運転手の娘であり、篤の妹・未来の友人でもあった。

あかねは霊感があるらしく、高校の同級生2人からこっくりさんに誘われる。そのうちの1人は、無神経かつ自分勝手で非常に腹が立つキャラ。話の本筋にはまったく関係ない登場人物で出番自体も短いのに、妙に印象に残った。

残念なことに、この腹立つ女は呪怨には巻き込まれない模様。作中で明確に被害に遭うのは、もう1人の常識のある同級生だ。不条理さも『呪怨』の特徴とはいえ、ついつい腹立つ女のほうがひどい目に遭えばいいのにと思ってしまう。

他に悪い意味で印象的だったのは、恋人に刺殺される女性だ。この女、ゲロった直後の彼氏にキスをしやがるのだ。「(うがいしなくても)平気」とほざいていたが、見ているこっちが気にするんじゃ!

 

不気味な雰囲気はあるが……

スタッフ紹介のテロップを交えつつ、怪奇現象の現場を紹介する冒頭のシーンは、『呪怨』らしい不穏な雰囲気があってよかった。その直後に流れる、伸びた髪が鞄からあふれるシーンも、今後の展開に期待を持たせてくれるものだった。

他にも、サンタの仮装した配達員が訪れた家で、奥さんが何度も「今、手が離せなくて」と言うシーンは不気味でいいと思う。その後の展開も、ホラーとしては及第点だろう。

しかし、怖さや不気味さを出そうとしている努力は見られるのだが、作品全体としては物足りなさを感じる。『呪怨』として見ても、幽霊の登場が少ない気が。『呪怨』を名乗るのなら、幽霊をバンバン出せと言いたい。

幽霊の登場に合わせて大きな効果音を鳴らす、音で脅かすタイプのホラーに成り下がっているのも残念な点だ。

音といえば、BGMはホラー向けの不穏な雰囲気のある曲である。だが、妙に音が大きいのが気になってしまう。旧作は、ここまで音の主張が激しくなかった気がするのだが…。

 

『白い老女』単体では根本の原因が不明

『白い老女』で数々の犠牲者が出たのは、篤が凶行に及んだのが原因だった。では、篤はなぜそんなことをしてしまったのか?

一家は惨殺事件の前に、惨劇の現場となる一軒家に越してきた。作中の描写を見る限り、どうもその家に元々、呪怨があったようだ。

しかし本作では、その家で起こった何かについての説明はない。そのため、『白い老女』単体では根本の原因が不明のまま終わるため、スッキリしない。本作が煮え切らない終わり方をしているのも、もやもや感に拍車をかけている。

劇場公開時、『呪怨 白い老女』は『呪怨 黒い少女』という作品と同時に上映されていた。この2作品はどうやらリンクしているらしい。多分、家にまつわる話は『黒い少女』で明かされるのだろう。違ったら赤っ恥。

呪怨 黒い少女

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 公開当時は同時上映だったから問題なかったのだろうが、今から見る人には不親切だ。DVDも『白い老女』と『黒い少女』、それぞれ単品でしかないらしい。

 

呪怨』というより『怪談新耳袋

本作の目玉の悪霊・白い老女は、白塗りの顔に黒い目元という強烈なビジュアルの幽霊だ。とある事情から、バスケットボールを持ち歩いている。

この白い老女、人によってはどこかで見覚えがあるかもしれない。それもそのはず、オムニバスホラー『怪談新耳袋・劇場版』の『姿見』に出てくるババアにそっくりなのだ。

映画「怪談新耳袋 劇場版」【TBSオンデマンド】

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 なぜかというと、『白い老女』と『姿見』を担当した監督が同一人物だからである。両作の監督を努めたのは三宅隆太氏だ。

また、本作は『呪怨』シリーズとして見ると、少し気になる部分もある。呪われた場所に入ったために悪霊に狙われるというのが、『呪怨』の核だ。

だというのに、本作では「場所」ではなく「物」が主軸となっているエピソードがある。例えば、タクシー運転手が行方不明になったのは、乗客が持っていた鞄のせいだ。運転手自身が呪われた場所に立ち寄ったという描写はない。

呪怨』は不条理さが売りだが、「呪われた場所に立ち入る」というプロセスだけは絶対だったはずだ。

しかし本作では、この絶対のルールが軽視されているように思える。呪怨に触れた人とこっくりさんをやったために、白い老女と遭遇してしまった人物もいた。

これだけなら、監督が違うから解釈も違うんだろうと捉えることもできる。しかし、白い老女が『姿見』の幽霊と同じ見た目なこともあって、本作は『呪怨』というより『怪談新耳袋』の特別版のように思えてしまった。

 

『白い老女』より『姿見』がおすすめ

呪怨』シリーズは、複数の人物の視点で描かれるオムニバス形式の作品で、時系列が入れ替わっているのが特徴だ。独自の構成は『白い老女』でも踏襲されており、シリーズの売りである不条理さも入っている。

しかし正直、『呪怨』のファンにはおすすめしにくい。伽椰子が出ないのもあるが、幽霊そのものの出番が少ないため、物足りないのだ。さらに白い老女のビジュアルのせいで、本作が『怪談新耳袋』としか思えない。

個人的には『白い老女』より、『怪談新耳袋・劇場版』の『姿見』がおすすめだ。『新耳袋・劇場版』の他の作品はどうだったか覚えていないが、『姿見』のインパクトは一見の価値ありだと思っているので。

 

呪怨 白い老女

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