マンボウ映画レビュー記

Amazon Prime Videoで見られるホラー映画を中心に、適度にネタバレしつつレビューしています。たまにOVAや小説を取り上げることも。ライブドアブログより移行作業中。

『呪怨 黒い少女』は『呪怨』らしさを排除したリメイクを見てみたい

呪怨 白い老女』と同時上映された、『呪怨』シリーズの番外編『呪怨 黒い少女』。

呪怨』の名を冠しているが、実際は怖くない普通のホラーである。『呪怨』本家も人によっては笑えてしまって怖くないのだが、それはともかく。

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『黒い少女』では呪怨』の重要な設定が無視されており、数少ない『呪怨』の特徴も足を引っ張っているようにしか思えない。

一応、話自体は普通のホラーとしてはありなので、『呪怨』要素を撤廃したリメイクを見てみたい気持ちはある。

 


呪怨 黒い少女(予告編)

 

 

あらすじ

本作は、小学生の芙季絵(ふきえ)の身に異常が起こるところから始まる。芙季絵自身はどこにでもいる普通の女の子だったが、突然、奇声を発して倒れるなどの異常が見られるようになってしまう。

最大の被害者である芙季絵には、実は双子の妹がいた。この妹、まだ胎児だった頃に芙季絵に吸収されてしまい、以後、嚢腫として芙季絵の体内に存在していたのだ。

産まれることのできなかった妹は、恨みを抱え続けた結果、芙季絵に害為す悪霊と化した。

悪霊の存在は、芙季絵の母・季和子もやがて知ることになる。季和子は霊能力のある妹・真理子に頼んで除霊をしてもらおうとするのだが――。

 

インパクトのない黒い少女

同時上映された『白い老女』同様、本作『黒い少女』は『呪怨』の番外編である。そのため、本家の看板キャラ・伽椰子は出てこない。タイトルにもある黒い少女が、本作の悪霊だ。

しかしこの黒い少女、伽椰子たちと比較するとインパクトがない。見た目が黒塗りなだけで、それ以外の外見的特徴が皆無である。

伽椰子(かやこ)のように、血反吐を吐きながらアクロバティックなポーズを取ることもない。俊雄のように、ブリーフ一丁で猫の鳴き声を出すこともない。

白い老女も黒塗りの目元と顔芸で、ビジュアルだけなら伽椰子といい勝負だった。

呪怨 白い老女

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 だというのに、黒い少女は怖さもインパクトもない。ビジュアル的な魅力が悲しいほどにないのだ。

 

無能すぎる霊能力者・真理子

芙季絵(ふきえ)の母・季和子は、霊能力のある妹・真理子に除霊を頼む。真理子が黒い少女を除霊するシーンは、本作の見所の一つだろう。

真理子は最初、姉の季和子に「精神的な問題かもしれないから、医者に任せるべき」という旨を言う。しかし幼い息子のいる真理子は、同じ母として思うところがあったのだろう、除霊を引き受ける。

水垢離して、除霊に失敗したときを考えて家に結界を張り、いざ芙季絵の元へ。

除霊を始めると、芙季絵のお腹が盛り上がり、大きな顔が浮かび上がる。先ほど、黒い少女に悪霊としての魅力がないと言ったが、人面瘡のごとき顔は中々のインパクトだった。

しかしこの後、衝撃の事実が判明する。実は、芙季絵と黒い少女が入れ替わっていた。真理子が除霊したのは芙季絵だったのだ。これ、笑うところだろ。

 

『白い老女』との関係性

『黒い少女』は、同じく『呪怨』の番外編である『白い老女』と同時上映された。『白い老女』で悪霊が生まれたのは、とある一家が呪われた一軒家に引っ越したことが原因だ。

『白い少女』では、家がなぜ呪われたのかは描かれなかったが、その答えは『黒い少女』で判明する。無能な霊能力者・真理子の一家が住んでいた家こそが、『白い老女』の始まりの家なのだ。

また、『呪怨』本家の俊雄も登場している。本編には一切絡まないため、ただのファンサービスだが。

 

呪怨』の基本が無視されている

呪怨』とは、清水崇監督のホラー作品名だ。それと同時に、作品の冒頭で解説される「つよい恨みを抱いて死んだモノの呪い」という意味でもある。

この呪いは、「死んだモノが生前に接していた場所に蓄積され」る。つまりホラー作品の『呪怨』とは、呪われた場所にまつわる物語なのだ。

『白い老女』でも、『呪怨』の核となる場所の設定が軽視されていたように思う。『黒い少女』に至ってはガン無視である。

事の発端は、芙季絵(ふきえ)の腫瘍。この腫瘍は産まれることのなかった双子の妹で、悪霊である黒い少女だ。黒い少女に呪われる人々は、芙季絵の関係者がほとんどである。場所は一切関係ない。

オムニバス形式、時系列のシャッフル、「アアアアア…」というエッジボイス。こういった『呪怨』の表面的な特徴は取り入れているが、根幹の設定を無視するのなら『呪怨』である必要がないのでは?

 

呪怨』として見なければ普通のホラー

呪われた場所以外にも、『呪怨』としては問題のある部分がちらほら見られる。

序盤から黒い手、エッジボイスなど、幽霊は存在感を示している。しかし中々、姿を見せようとはしない。呪怨である以上、もっと幽霊を見せるべきだ。幽霊が自重しないことも、『呪怨』の特徴の1つなのだから。

数日に渡って壁ドンもといポルターガイストを繰り返すのも、呪怨らしくない。一部例外はあるが、『呪怨』本家なら、姿を出した伽椰子(かやこ)は速攻で殺したり誘拐したりする。

幽霊が中々、姿を見せず、致命的な危害を加えるまでに時間がかかるのも、『呪怨』らしくない。しかし、呪怨』として見なければ普通のホラーの範疇である。怖くないという問題はあるが。

 

呪怨』らしさを排除したリメイクを見てみたい

番外編とはいえ、一応『呪怨』シリーズの一作である『呪怨 黒い少女』。しかし、『呪怨』の重要な設定を無視しているのは大問題だ。

呪われた場所が重要な『呪怨』において、水子(と言っていいのか?)の恨みは違和感がある。けれど通常のホラーでは、水子の恨みはそれなりにあるネタだ。

普通のホラーとして見れば、それなりに見られる作品である。『呪怨』であることが足を引っ張っているようにすら思えるほどだ。

個人的には、『呪怨』らしさを排除したリメイクを見てみたい。当然、恐怖演出の大幅強化は必須だが。

 

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