『鬼談百景』低予算臭が半端ない、当たり外れの激しい短編ホラー10本セット
『十二国記』や『ゴーストハント』、近年では『残穢』で知られている小野不由美氏のホラー小説『鬼談百景』。
そのうちの10作品を映像化したのが本作だ。
原作小説はあらすじに書かれているとおり、百物語がテーマのホラー短編集である。しかし、実際に収録されているのは99作品までだ。これはなぜかというと、100話目に当たるのが同氏の長編ホラー小説『残穢』だから。
原作小説は「もしかしたら本当にあるのでは……」なんて思わせてくれる、絶妙な不思議さや不気味さが特徴の短編集だった。
そんな原作から10作品を映像化した結果、当たり外れの激しいホラー短編集になった。全体的に低予算臭が半端ないのもポイント。
- 深夜にドライブしている若者たちの話『追い越し』
- 孫を預かった女性の体験談『影男』
- 忠実に原作を映像化している『尾けてくる』
- なぜか先生がクズ男になっている『一緒に見ていた』
- 映画『鬼談百景』で一番怖いかもしれない『赤い女』
- おかしなラジオ番組にハマってしまう『空きチャンネル』
- 残業していた先生2人が繰り広げるギャグ『どこの子』
- 暗黙の了解の説明がなく、わかりづらい『続きをしよう』
- 子沢山の家の奥さんにまつわる噂話『どろぼう』
- 原作を読んでなければ楽しめそうな『密閉』
- できれば『鬼談百景2』を作ってほしい
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深夜にドライブしている若者たちの話『追い越し』
『追い越し』は、深夜にドライブしている若者たちの話だ。ある日、人家の明かりすらない道を歩く女性を見つけ、車で追い越そうとする。
途中までは良かったのだが、最後の最後でギャグになった。画面に向かって幽霊が近寄ってくるのだが、CG処理された幽霊の姿がチープすぎる。
孫を預かった女性の体験談『影男』
『影男』は、孫を預かった女性の体験談だ。孫たちと一緒に昼寝をしていた女性は、バンという窓を叩く音で目が冷める。
映画『鬼談百景』の中では、割としっかりとしたホラーに仕上がっている。難点は、鼻血がチョコレートにしか見えないところか。
忠実に原作を映像化している『尾けてくる』
『尾けてくる』は、公園に不審な男性がいるのを見た女子高生の話。不気味に思った女子高生は、すれ違った男性に公園の様子を見てもらう。
妙なアレンジが多い本作の中では、かなり忠実に原作を映像化している。そのおかげかギャグになっておらず、怪談らしい不気味な雰囲気が出ていてよかった。
なぜか先生がクズ男になっている『一緒に見ていた』
『一緒に見ていた』は、事務員の女性が首を吊っていたのを発見した先生の話だ。他の先生たちが警察への連絡などで教室を出ていく中、一人取り残されてしまった先生はありえない体験をする。
原作小説に比べると、恐怖体験をした先生がなぜかクズ男になっている。話自体は問題ないのだが、先生が最低なヤリチン野郎なせいで笑ってしまった。
映画『鬼談百景』で一番怖いかもしれない『赤い女』
『赤い女』は、「この話を聞いた人は呪われる」という典型的な怪談都市伝説だ。肝心の赤い女は典型的とは言えないくらいアグレッシブだが。
転校生の誕生日を祝う体験者たちだったが、転校生の話した怪談『赤い女』のせいで事態は一変する。
原作小説を上手にアレンジしており、映画『鬼談百景』で一番怖いと思う人も多いのではないだろうか。アグレッシブすぎてギャグな気もするけど。
まあ、一番怖いのは赤い女ではなく、転校生が襲われているときの体験者の反応かもしれないが。
おかしなラジオ番組にハマってしまう『空きチャンネル』
『空きチャンネル』は、おかしなラジオ番組にハマってしまった男子高生の話だ。本来なら番組のない周波数で、1人の女の生々しい愚痴が流れている。
作品の出来的な意味で、ここからいろいろと怪しくなる。男子高生はラジオにハマったせいで様子がおかしくなってしまう。そういうのをわかりやすく表現したかったのだろう。だけど白塗り顔はギャグにしか思えなかった。呪怨かよ。
残業していた先生2人が繰り広げるギャグ『どこの子』
『どこの子』は、職員室で残業していた先生2人の恐怖体験だ。自分たちしかいないはずの学校で、人が立てる物音が聞こえてくる。
本作屈指のギャグ話。怪奇現象に遭遇したときの「エクセレーント」って叫び声はなんだよ。女の子の幽霊におちょくられ続けた結果、大阪弁で怒り出すのもやっぱりギャグでしょ。
暗黙の了解の説明がなく、わかりづらい『続きをしよう』
『続きをしよう』は、普段は墓で遊ぶこともないのに、その日に限ってなぜか墓で遊ぶ子どもたちの話。遊んでいると1人ずつ怪我をし、怪我をした子は帰っていく。
原作小説では、「怪我をしないと帰れない」という謎の暗黙の了解があった。これがこの話の不気味さに直結しているのだが、映画ではナレーションによる説明がない。そのため、原作を読んでいないと訳がわからないのではないだろうか。
子どもたちの怪我は、適当に絵の具で描きました感がある。もうちょい特殊メイク頑張れや。あと、怪我をしたときの一部の音が妙に大げさなせいで、ギャグにしか思えない。
子沢山の家の奥さんにまつわる噂話『どろぼう』
『どろぼう』は、子沢山の家の奥さんにまつわる噂話だ。「太った」と言い張る奥さんだが、傍目には妊娠したようにしか見えない。しばらくして奥さんのお腹が急にスッキリしたが、果たして本当に太っただけなのか。
原作小説を忠実に再現しているが、そもそも映像化に向かない作品だと思う。なぜこれを映像化したのか。もっと映像化に向いている作品があったのでは?
原作を読んでなければ楽しめそうな『密閉』
『密閉』は、彼氏と別れた女性の話。きちんと扉を閉めたはずなのに、クローゼットが開いている。クローゼットの中には、元カレが拾ってきたスーツケースがあった。
「実際にありそうな不気味さ」が小説『鬼談百景』の良さだと思っているが、映画の『密閉』は実際にはありえない話にアレンジされている。そのせいで個人的には引っかかりを覚えたが、原作を読んでない人なら素直に楽しめそう。
できれば『鬼談百景2』を作ってほしい
CG処理や怪我の特殊メイクが雑なため、全体的に低予算臭が半端ない。そのせいもあって、一部の話は完全にギャグになってしまった。
しかし、短編ホラーとしてそれなり以上の作品もある。身の毛のよだつような怖い話を求める人よりは、怪談や都市伝説が好きな人向けの作品だろう。
原作小説は全部で99作あり、今回映像化されたのは10作だけだ。映像化に向いていない話もあるため、全部を映画化しろとは言わないが、できれば『鬼談百景2』を作ってほしい。
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