『ハッピー・デス・デイ 2U』SF要素と設定の粗がパワーアップ
ホラーと見せかけて実はコメディ要素の強かった、殺人鬼に狙われたビッチが自分の死ぬ1日を繰り返す『ハッピー・デス・デイ』。
その続編に当たるのが『ハッピー・デス・デイ 2U』だ。前作よりSFとヒューマンドラマの要素が強くなっている。パラレルワールドに関するツリーの葛藤は、定番ながらも本作の見所の1つだろう。
しかし、SF要素が強まったせいで、設定の粗が前作以上に目立つようになってしまった。
- あらすじ
- 主役交代と見せかけて、やっぱりツリーが大活躍
- 強くなったSFとヒューマンドラマの要素
- 弱まったコメディ要素
- 分かりづらいというか説明不足なSF要素
- よくよく考えるとパラレルワールドのカーターがクソ野郎
- エンディングで鬼畜な所業をするツリー
- ヒューマンドラマやコメディ要素に注目しよう
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あらすじ
元ビッチな女子大生のツリーは、死のループを何とか乗り切った。協力してくれたカーターとは、なんだかいい雰囲気。
しかしツリーは、カーターのルームメイト・ライアンが死のループに入り込んでしまったことを知る。かつての自分のように、ライアンも殺人鬼に襲われていたのだ。
事情を知ったツリーは、新たな殺人鬼を止めてライアンを助けようとする。だがそれは、ツリーの受難の日々が再び幕を開ける予兆だった。
主役交代と見せかけて、やっぱりツリーが大活躍
『ハッピー・デス・デイ 2U』の序盤は、ライアン視点で物語が展開される。そのため、今度の主人公はライアンのような印象を受けるだろう。
ツリーのキャラ性が面白さにつながっていたため、主役交代は残念に思うかもしれない。
だが、実際にはツリーが主役続投で、相変わらず軽いノリで死にまくるので安心してほしい。これこそが『ハッピー・デス・デイ』だよ。おかえり、ツリー。
とはいえ、「犯人に殺されたくないから自殺しよう!」はさすがにどうなのよ!?
強くなったSFとヒューマンドラマの要素
『ハッピー・デス・デイ』は、SFや恋愛、ヒューマンドラマなどの様々な要素を詰め込んだホラーコメディだった。
続編の『ハッピー・デス・デイ 2U』は、前作と比較するとSFとヒューマンドラマの要素が強くなっている。
今回は、ツリーがパラレルワールドでタイムリープする話だ。パラレルワールドネタでお役といえば、故人との再会だろう。
当然、本作でもそのお約束は踏まえている。前作を覚えているファンなら、ツリーとママの再会や元の世界に戻るツリーの葛藤など、定番ながらも感情を揺さぶる物語に涙を流してしまうに違いない。
弱まったコメディ要素
『ハッピー・デス・デイ 2U』は、SFとヒューマンドラマの要素が強くなった反面、コメディ要素が弱くなった。前作と比較すると、大笑いできるシーンが減ったように感じる。
これはシリアスや感動的なシーンが増えた弊害と、笑い自体が弱くなったという2つの理由のためだ。『ハッピー・デス・デイ』には何よりも笑いを求めていたため、その点では物足りなかった。
一応、前作並に笑えるシーンもあるにはある。例えば、パラレルワールドのカーターとダニエルのキスシーンがそれだ。
まさかのカップリング+妙に力の入ったBGM+ツリーのリアクションのせいで、このシーンはメチャクチャ笑った。
分かりづらいというか説明不足なSF要素
SF部分が分かりづらい。難解というより、説明不足と言うか説明する気がないというか。
もともと、前作自体が設定を作り込んでいる作品ではなく、細かい粗はノリや勢いで流すタイプの作品である。が、『ハッピー・デス・デイ 2U』ではスルーできない大きな問題点がちらほら。
本作ではSF要素が増したのだが、これが裏目に出てしまった。パラレルワールドの要素を全面に押し出した結果、わかりにくい部分や説明不足なところが出てしまい、物語に引っかかりを覚えてしまうのだ。
本作では、序盤でライアンが2人に増えることになる。1人はその世界にもともといたライアンで、もう1人はある理由でパラレルワールドからやってきた存在だ。
だが、ツリーがパラレルワールドに移動すると、途端に2人のライアン問題はなかったことになってしまう。
一応、ツリーが終盤でライアン(パラレル)が発生する理由を潰したためだと解釈できるが、ここら辺の説明が不十分に感じた。この説明不足のせいで、初見時は「あれ、ライアン(パラレル)は?」と余計な混乱をしてしまった。
あと、作中で「別次元の同一存在が1つの世界に存在する矛盾」をバタフライ効果と称しているが、タイムパラドックスならぬパラレルパラドックスとでも呼んだほうがいいだろう。
バタフライ効果は「少しの変化が最終的に大きな違いを引き起こす」という意味だし。
よくよく考えるとパラレルワールドのカーターがクソ野郎
パラレルワールド由来の問題点に関して言えば、よくよく考えるとパラレルワールドのカーターが地味にクソ野郎になっているところも挙げられる。
パラレルワールドのカーターは、ツリーの知人であるダニエルの恋人だ。だというのに、最終的にツリーとカーター(パラレル)がキスシーンをかます。これはダメでしょう。
パラレルワールドでママと再会したツリーは、当初、平行世界に残ることを決めた。だが最終的に、ツリーは元の世界に戻ることを決意する。その決意には、元の世界のカーターへの恋心が大きな割合を占めていたはずだ。
だというのに、カーター(パラレル)といい雰囲気になるのなら、「元の世界に戻る必要なくね?」ってなってしまう。パラレルワールドでの出来事とはいえ、カーターが浮気するクソ野郎になっているし。
ビッチと浮気野郎と考えれば、お似合いといえばお似合い……か?
エンディングで鬼畜な所業をするツリー
『ハッピー・デス・デイ 2U』のエンディングは、露骨に続編を意識したものである。前作から嫌な女枠として登場するダニエルだが、なんと彼女がループに入り込んだところで終わるのだ。
なぜダニエルがタイムリープすることになるのか。ツリーのせいである。それも、ツリーが意図せずにループする原因になってしまうのではなく、わざとダニエルをループに叩き込むのだ。
おまえ、いい人間になるんじゃなかったのか!? 前作でそんなこと言ってなかったか!?
まあ、平然と鬼畜な所業をやらかしたツリーに思わず笑ってしまったが。パラレルワールドのダニエルがカーターと恋人になっていたことへの嫉妬も入っていますね、これは。
ヒューマンドラマやコメディ要素に注目しよう
ツリーのひどい死に方やちょくちょく挟まれる笑えるシーンなど、前作からの良さもある『ハッピー・デス・デイ 2U』。
前作よりもSF色が強まり、定番ながらもパラレルワールドだからこそのドラマが繰り広げられる。しかし、SF要素を強調した結果、設定面での粗が際立ってしまった。
とはいえ、ヒューマンドラマの要素も強くなったため、ツリーとママの物語に興味があるのなら見る価値はある。SF設定については深く考えず、ヒューマンドラマやコメディ要素に注目しよう。
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