『マジック・マイクXXL』男性ストリップダンサーの緩い青春ロードムービー
主演のチャニング・テイタムの実体験を参考に、男性ストリップダンサーの苦悩を描いた『マジック・マイク』。
続編の『マジック・マイクXXL』はまさかの路線変更を図り、おっさんストリッパーたちの緩い青春ロードムービーになった。
本作でもおっさんの悩みが描かれるが、シリアスだった前作よりかなり緩くて前向きだ。また、目玉の1つであるストリップダンスは、キレは健在のまま性的表現が多少ソフトになった。
そのため、視聴のハードルは下がっており、男性のストリップやおっさんたちの青春を気楽に楽しめる。また、続編ではあるが、最低限の予習をすれば前作を見ていなくても十分ついていける。
しかし、作風の違いや前作のエンディングの否定とも受け取れる設定がある。それゆえ、とある人物のファンにはちょっと勧めづらい。
映画『マジック・マイク XXL』予告1【HD】2015年10月17日公開
あらすじ
マイクがストリップクラブを辞めてから3年が経った。念願の家具屋をスタートしたマイクだったが、経営状態はいいとは言えない。
ある日、マイクのもとにストリップクラブ時代の同僚から連絡が入った。クラブオーナーのダラスが死亡したという。
マイクは葬儀のために同僚たちに会いに行ったが、訃報はマイクを呼び寄せるための嘘だった。ダラスはお気に入りのアダム(芸名キッド)と一緒に中国進出を図り、他のメンバーはクビにされてしまったそうだ。
お払い箱になった連中は、すでにストリップとは違う仕事に就いていた。しかし、思うようにはいかない。そこで最後に1発かましてやろうと、男性ストリップの大会への出場を決めていた。
うっぷんが溜まっていたのは、かつての同僚だけではない。マイクはマイクで家具屋の経営難やプライベートでの痛手があったため、急きょ仲間入りをする。
キャンピングカーに乗り込んだマイクたちは、大会の開催されるマートルビーチ目指して出発進行。かくして、おっさんストリッパーたちの緩くて遅い青春が始まる。
おっさんストリッパーたちの緩い青春ロードムービー
前作『マジック・マイク』では、新入りのアダムと対比させながらマイクの悩みをシリアスに描いていた。マイクとアダムの描写に重点を置かれている反面、ビジネスライクな関係の同僚たちは掘り下げられることもなかった。
しかし本作『マジック・マイクXXL』は、おっさんストリッパーたちが緩い青春を繰り広げる作風に変わっている。
マイクたちのドライでビジネスライクな関係は、キャンピングカーでの旅を通して緩さと暑苦しさを併せ持った友情になっていくのだ。
また、本作ではマイクだけでなく、一緒に遅い青春を繰り広げる同僚たちの悩みにもフォーカスが当てられる。けれど重苦しい空気になることはなく、作品全体としては緩くて前向きな雰囲気を保っている。
前作のようなシリアスなドラマはない。その代わりに、おっさんストリッパーたちの緩い青春を気負うことなく楽しめるのが本作だ。
キレのあるストリップダンスは健在
『マジック・マイクXXL』は前作とは方向性の違う作品になった。そのため、前作はシリアスなドラマが売りだったが、本作はマイクたちの緩い青春を楽しむものになっている。
しかし、方向性が変わっても失われない目玉もあった。そう、男性ストリップダンサーのパフォーマンスだ。
MAGIC MIKE XXL Clip "Pony" Subtitulado
前作で目玉の1つであるストリップダンスのキレは健在だ。特に、大会でマイクがペアを組んで踊る鏡のダンスは、ダンスとしてもパフォーマンスとしても素晴らしい。
また、ストリップの性的表現が多少ソフトになっている。新規が入りやすくなったものの、もっと過激なものを見たい人もいるかもしれないので賛否分かれるところか。
ダンスに関して欲を言えば、マイクたち以外の大会参加者のダンスも見たかった。
『マトリックス』のネロや『300 〈スリーハンドレッド〉』のスパルタ兵(のコスプレイヤー)がどんなダンスを繰り広げるのか、わたし、気になります!
前作のエンディングが台無し
前作『マジック・マイク』では、オーナーのダラスがクソだったり新入りのアダムがやらかしまくったりしたせいで、マイクは精神的にズタボロになった。
けれど、最後の最後でブルックというかけがえのない理解者を得ることができた。
だが『マジック・マイクXXL』で、マイクはブルックと破局していたことが判明する。マイクは失恋に踏ん切りをつけるために大会に参加するのだ。
つらたんってなりながらもエンディングで一安心した身としては、なんということをしてくれたのでしょうと文句を言いたい。前作のエンディングが台無しじゃねえか。
作風の変更自体は別にいいし、そのあおりでキャラが多少ブレるのも許容できる。だけど、なんでわざわざ前作のエンディングを否定した?
ブルックとの破局は、マイクが大会に参加する主な理由ではある。けれど、参加理由は他のものでも十分代替できるし、失恋がシナリオに効果的に組み込まれているとは言いがたい。
安易な動機づけのためだけに必要のない前作否定をしたのは、ちょっと擁護できない。
気楽に男性のストリップを楽しみたい人にはおすすめ
マイクや仲間のストリップダンサーが再集結し、キャンピングカーでの旅やらダンス大会やら青春する『マジック・マイクXXL』。
シリアスゆえに薄暗い雰囲気のあった前作『マジック・マイク』とは違い、緩い青春ものとなっている。そのため、気楽に男性のストリップを楽しみたい人にはおすすめできる。
が、必要もないのに安易に前作エンディングを否定したのだけはなあ。せめてもう少し必然性があれば……。
良くも悪くも方向性が違うため、前作が好きだからこそ本作を受け付けられない人や、逆に本作のほうを評価する人もいるだろう。シリアスが見たいなら前作、緩い青春が好きなら本作だけ見たほうがいいかも。
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