『ザ・バンク 堕ちた巨像』巨大銀行の不祥事という実話を元にしたサスペンス映画
アメリカ・ドイツ・イギリスの共同で制作された、2009年のサスペンス映画『ザ・バンク 堕ちた巨像』。
インターポールの捜査官が、ヨーロッパの巨大銀行IBBCの犯罪行為を暴くために奔走する。
ニューヨークにあるグッゲンハイム美術館での銃撃戦が印象的で、本作では美術館のレプリカを作って銃撃戦を撮影したらしい。実際の銃撃シーンも力が入っているのでおすすめだ。
IBBCは凶悪で様々な妨害をしてくるが、テンポのいい展開と主人公サリンジャーたちの有能さのおかげでストレスにならない。むしろ、サリンジャーたちがどうやってIBBCを追い詰めるのかが気になるくらいだ。
しかし、上述の銃撃戦を機に、作中の雰囲気が大きく変わる。エンディングもスッキリしたとはいえない苦々しいものだ。現実的かもしれないが、好き嫌いは分かれるかも。
- あらすじ
- 事件を捜査するインターポールの捜査官と検事補
- 巨大銀行IBBCの思惑
- 実話が元ネタ?巨大銀行IBBCのモデルとは
- グッゲンハイム美術館での銃撃戦
- テンポのいいストーリー展開と有能なサリンジャーたち
- 銃撃戦後から鬱々とした雰囲気が強まる
- テンポよく進む捜査と熱い銃撃戦、ビターなエンディング
あらすじ
インターポールの捜査官サリンジャーは、同僚のシューマーがドイツで煙草のポイ捨てと路上ゲロをやらかして倒れるところを目撃する。運び込まれた病院で、シューマーは心筋梗塞と判断される。しかしサリンジャーは、自分たちが追っている事件の状況とシューマーの遺体に残されていた痕跡から暗殺と判断する。
さらに、シューマーが死亡直前に会っていた人物も事故死したことが判明。その人物は巨大銀行IBBCの幹部で、IBBCの犯罪行為を告発しようとしていたために口封じで消されたのだ。
サリンジャーはニューヨーク検事局のエレノアと協力し、捜査を進めていく。しかし、証拠を改ざんしたり、情報を握っていた重要人物を狙撃したりと、IBBCはあらゆる手を使って犯罪の隠蔽を行う。
それでも粘り強い調査を続けるサリンジャーたちは、IBBCに雇われた狙撃手コンサルタントにたどり着くのだが――。
事件を捜査するインターポールの捜査官と検事補
主人公のサリンジャーは、インターポールの捜査官だ。優秀な捜査官であると同時に、IBBCに殺された人々や正義のために行動する熱血漢でもある。
そんな彼とともに捜査を進めるのが、ニューヨーク検事局の検事補エレノアだ。彼女も正義感を持った人物だが、とある事情から途中でフェードアウトしてしまうのが残念。
他にも、IBBCに雇われたクールな暗殺者コンサルタントや、次期イタリア大統領候補でIBBCと仲違いをしたカルビーニなど、個性的な人物が登場する。
巨大銀行IBBCの思惑
ルクセンブルクに本部がある巨大銀行IBBCは、紛争国に巨額の借金を負わせて裏から支配しようとしていた。しかもその陰謀には、複数の国家や多国籍企業、挙げ句には犯罪組織までが関わっていた。
そんな強力なコネクションを持っているIBBCは、作中でやりたい放題だ。
告発しようとした幹部の死について、IBBCの頭取が事実と矛盾した証言をしていたことが調査で判明するが、その調査結果を改ざんする。他にも、イタリア大統領候補のカルビーニを演説中に暗殺したり、狙撃現場の証拠を捏造したりと、コネクションをフル活用して本当にやりたい放題だ。
巨大犯罪組織と呼んだほうがいいIBBCに、サリンジャーたちがどうやって立ち向かっていくのかが本作の見所のひとつだ。
実話が元ネタ?巨大銀行IBBCのモデルとは
巨大銀行の国際的な犯罪行為を描いた本作だが、実はIBBCにはモデルがある。
モデルとなったのは、国際商業信用銀行(Bank of Credit and Commerce International)。かつてルクセンブルクに存在した銀行で、BCCIという略称で知られている。IBBCとBCCI。名前からして隠す気がない。
1972年に設立されたBCCIは、マネーロンダリングや武器密輸、麻薬取引への関与、諜報機関との協力関係など、様々な犯罪・不祥事に手を染めていた。核兵器の取引にも関与していたらしい。とんでもねえな。
グッゲンハイム美術館での銃撃戦
ニューヨークにあるグッゲンハイム美術館での銃撃戦は、本作屈指の見せ場だ。
サリンジャーたち捜査官チームが暗殺者のコンサルタントを逮捕しようとしたときに、重火器で武装した謎の集団が現れる。IBBCがコンサルタントの口を封じようとしたのだ。
襲撃者の一人がサリンジャーに銃口を向ける。絶体絶命と思われたが、倒れたのは襲撃者。コンサルタントがサリンジャーのピンチを救ったのだ。
直接的な面識や対決はなかったが、実質的に敵対関係だったサリンジャーとコンサルタント。そんな2人が利害の一致から協力して襲撃者たちと銃撃戦を繰り広げる。好きな人にはたまらない熱い展開だ。
※以下は美術館部分の公式動画。英語音声、字幕なし、銃撃戦の途中で終わってしまうという三重苦だが。銃撃戦が始まるのは2:40くらいから。
The International - film clip - 'Guggenheim'
テンポのいいストーリー展開と有能なサリンジャーたち
銃撃戦前までは、サリンジャーたちがテンポよく捜査を続けていく。
捜査場面で印象深かったのは、カルビー二の狙撃現場だ。現場に残された銃痕に棒を突っ込んで弾道を可視化し、狙撃手が2人いたことが判明。狙撃手がなぜ2人いたのかを推理するサリンジャーは、非常にかっこよかった。あと喰霊のアニメ思い出した。
IBBCの凶悪さは凄まじく、捜査に邪魔が入りまくる。それでもサリンジャーたちの熱意や有能さのおかげで、作中に流れる雰囲気は前向きなものだった。
しかし、銃撃戦後から雰囲気が鬱々としたものに変わる。
銃撃戦後から鬱々とした雰囲気が強まる
たかが一捜査官に、様々なコネクションを持つ巨大銀行IBBCは倒せない。銃撃戦後から、そういう雰囲気が一気に強くなる。
それでもIBBCをどうにかしたいなら、法の外に踏み出すしかない。サリンジャーはとある人物にそうささやかれるのだが、まるで悪魔のささやきだ。
その後、サリンジャーが迎える結末はビターなエンディングだ。スッキリしたとは言えないし、むしろある種の虚しさすら覚える。しかし、IBBCという巨大な犯罪組織が相手だと考えると、仕方ないのかもしれない。
一応、エンディングで映される新聞記事から、IBBCの犯罪が明るみに出るのでは、という希望もあるにはあるのだが……。
テンポよく進む捜査と熱い銃撃戦、ビターなエンディング
ストーリーの展開はテンポがよく、飽きさせない。巨悪のIBBCが相手のため、捜査妨害はしょっちゅうだが、サリンジャーたちの有能さのおかげでストレスは感じなかった。むしろ、IBBCをサリンジャーたちがどうやって追い詰めていくのか、期待が増した。
本作最大の見せ場の銃撃戦も派手でよかった。サリンジャーが暗殺者のコンサルタントと共闘するのは、好きな人にはたまらない熱い展開だ。
しかし、銃撃戦後からは雰囲気が大きく変わる。一捜査官にIBBCは倒せないというネガティブな雰囲気が強くなるためだ。迎える結末も、一応納得はできるものの、苦々しさを感じるものだった。
銃撃戦後の雰囲気やハッピーとはいえないエンディングは、人によってはマイナス要素かもしれない。それでも、作品全体としては一定以上の質はある。
巨悪に立ち向かうサリンジャーたちの活躍に興味を持てたのなら、ぜひ見てほしいと思う。