『シャッター』タイ映画をハリウッドリメイクして誕生したJホラー
女優・歌手の奥菜恵が幽霊を演じたハリウッド発のホラー映画『シャッター』。
タイ映画『心霊写真』のハリウッドリメイク作品であり、リメイク元の邦題どおり心霊写真が主軸となる作品だ。
監督を務めているのは、『感染』などのホラー映画や『世にも奇妙な物語』で多数の作品を担当した落合正幸氏だ。制作はホラー映画『リング』や『呪怨』シリーズを手掛けた一瀬隆重である。
さらに、『シャッター』の舞台は原作と異なり日本だ。これらの要因のため、Jホラーの雰囲気が強い作品になっている。
- あらすじ
- 日本が舞台ながらも主要人物はほぼ欧米人
- タイ映画のハリウッドリメイクだがJホラー
- 良くも悪くもわかりやすい脚本
- 心霊写真やカメラを活かしたホラー描写
- 見方を変えれば痛快な終盤
- ハリウッド映画好きよりJホラー好きにオススメ
あらすじ
主人公のジェーンは、カメラマンのベンと結婚したばかり。新婚ほやほやの2人は、ベンの仕事の都合で日本に滞在することになる。
仕事が始まる数日前に、ハネムーンとしてコテージを借りるジェーンたち。しかし、コテージに車で向かう途中、女性を轢いてしまった。
だが警察に連絡するも、肝心の女性が見つからない。結局、事故は見間違いということで処理されることに。
翌日、気分を切り替え、ハネムーンを楽しもうとする2人。しかし、コテージで撮った写真には、白いモヤのようなものが映り込んでいた。
やがてジェーンたちの周りに、轢いてしまった女性の姿が現れるようになる。
日本が舞台ながらも主要人物はほぼ欧米人
本作『シャッター』は日本が舞台だが、紛れもなくハリウッド映画である。そのため、主要人物はほぼ欧米人だ。
女主人公のジェーンと、彼女の夫でカメラマンのベンが主に幽霊の被害を受ける。他に物語に関わってくるのは、ベンの友人で巨漢のブルーノ、同じく友人で妙にうさんくさいアダムだ。
タイ映画のハリウッドリメイクだがJホラー
『シャッター』はタイ映画『心霊写真』のハリウッドリメイク作品だ。
しかし、舞台が日本で制作に日本人スタッフが関わっているためか、Jホラーといっても差し支えのない作風になっている。
音で怖がらせる演出もあるが、恐怖が徐々に忍び寄るJホラーの特徴が色濃い。そのため、ハリウッドらしいホラー映画を求める層には物足りない可能性が高い。
というか、ハリウッドリメイクなのに舞台を日本にする必要があったのだろうか? オリジナルの『心霊写真』もタイ映画だし。
とはいえ、Jホラーとして見ればお約束をしっかり抑えている。ハリウッドらしさにこだわらなければ問題ないだろう。
良くも悪くもわかりやすい脚本
先にも述べたが、『シャッター』はJホラーとしてのお約束は丁寧に守っている。そのため、脚本は良くも悪くもわかりやすい。
ホラーに慣れ親しんでいる人や察しの良い人なら、幽霊の正体が判明した中盤で、その後の展開が容易に想像できるだろう。お約束を様式美として受け入れるか、マンネリとして冷ややかに見るかで評価が変わるか。
また、話の展開そのものに目立ったアラはないものの、全体的に淡々としている。つまらないは言い過ぎだが、やや物足りない印象を受ける。
心霊写真やカメラを活かしたホラー描写
脚本は取り立てて出来がいいというわけではない。ホラー描写もJホラーらしい定番のものが多い。
だが、心霊写真やカメラを活かしたホラー描写は評価できる。心霊写真を活用して謎を解明したり、幽霊の姿を捉えるために写真を撮ったりするのだ。怖くはないが。
また、終盤には違う形で写真を利用している。『シャッター』視聴時には、そこにも注目してほしい。
強いてホラー描写の難点を挙げるなら、明滅の激しい場面が1つだけある。不安な人は部屋を明るくしてテレビから離れて見てね!
見方を変えれば痛快な終盤
『シャッター』はJホラー的な描写や展開の作品だが、終盤だけはある意味でハリウッドらしい展開になっている。因果応報とか自業自得とか、そういう感じ。
Jホラーの場合、主人公が不幸な目に遭ってスッキリしない終わり方をすることが多い。だが、『シャッター』は見方次第ではかなり痛快な終盤を迎えるのだ。
Jホラーのお約束を踏襲しながらも、最終局面はハリウッド好みの展開になっている。そのおかげで、個人的には笑って見終えることができた。あと肩車はギャグだろ。
ハリウッド映画好きよりJホラー好きにオススメ
タイ映画をハリウッドリメイクしたら生まれたJホラー『シャッター』。
ハリウッド映画らしさを求めると、主要人物が欧米人や最終盤の展開以外はそれらしい要素がない。むしろJホラー好きにオススメしたい作品か。
ストーリーはJホラーのお約束を抑えているものの、やや盛り上がりに欠ける。だが、心霊写真やカメラを活かした演出が光る。
多少胸糞な展開や設定があっても、終盤にスカッとできれば問題ない。そういう人向けのJホラーだろう。