『フッテージ』ダメな部分も目立つが不気味なフィルム映像は評価できる
事故物件で見つけたホームビデオのフィルムが発端となるオカルトホラー『フッテージ』。
主人公であるエリソンの癖が強く、中盤からはホラー演出がびっくり系ばかりになってしまう。そのため、残念なことに万人に勧められる出来ではない。
しかし、フィルムの薄暗い映像とホラーの親和性は高く、序盤は不気味な雰囲気が楽しめる。また、過去の栄光にすがるエリソンの哀しい一面を、我が事のように感じる人もいるのではないだろうか。
- あらすじ
- タイトルのフッテージの意味は?
- 割と癖の強い主人公エリソン
- 不気味な男ミスター・ブギーの影
- ジャンプスケアの乱用で不気味な雰囲気がなくなる
- ダメな部分が目につくがフッテージの映像は評価できる
あらすじ
10年前、ノンフィクション小説『流血のケンタッキー』でベストセラー作家となった主人公エリソン。しかし、エリソンはいわゆる一発屋で、その後は鳴かず飛ばすだった。
作家としての名声を忘れられないエリソンは、事故物件であることを家族に伏せたまま引っ越しをする。
エリソンたちの新居は、5人家族のうち4人が何者かによって首を吊らされ、子ども1人が行方不明になった場所だった。エリソンは新居で起きた事件を元に小説を書き、返り咲こうとしていたのだ。
荷ほどきの最中、エリソンは新居で段ボール箱を見つける。箱の中にはフッテージ(撮影されたフィルム)と映写機が入っていた。
好奇心からか、フッテージを再生するエリソン。映し出されたのは5人の家族の団らん、そして4人が首を吊るされる映像だった。フッテージの映像は、エリソンたちが引っ越してきた家で起こった出来事だったのだ。
タイトルのフッテージの意味は?
本作の原題は『Sinister』で、「邪悪な」という意味の英語だ。では、邦題の『フッテージ』とはどういう意味なのか。
フッテージは「撮影されたフィルム」という意味の英語だ。「未編集の映像」という意味もある。邦題は、事故物件な新居で発見されたフィルムのことを指しているのだ。
エリソンが見つけたフッテージは複数あり、そのどれもが家族の団らんとその後の惨劇を収めている。映像は惨劇を起こした犯人によって撮影されたもので、フィルムゆえの薄暗さも相まって不気味な雰囲気がよく出ている。
割と癖の強い主人公エリソン
あらすじを読んでもらってもわかるとおり、『フッテージ』の主人公エリソンは割と癖が強い。
エリソンは作家としての栄光が忘れられず、事故物件であることを内緒にしたまま引っ越しをする。
妻のトレイシーに「事件現場近くの家に引っ越したの?」と詰め寄られたときには「違う」と答える。嘘はついていないけど本当のことも言っていない。
当然、家族にバレるわけだが、悪びれることもなく開き直る。とんでもないクソ親父だ。
しかし、エリソンは過去の栄光にすがり、泥沼にはまっている哀しい男でもある。人によっては、ついうっかり共感やら同情やらしてしまうかもしれない。
不気味な男ミスター・ブギーの影
フッテージを見ていたエリソンは、映像の中に不気味な男ミスター・ブギーと血で描かれた謎のマークを見つける。ついにはエリソンの周囲にもミスター・ブギーの影がちらつき始める。
専門家によれば、謎のマークはブグールにまつわるマークらしい。ブグールは子どもの魂を食べる邪神で、その記録は古代バビロニアにまでさかのぼるという。ミスター・ブギーと呼ばれる存在は、邪神ブグールだった。
ブグールを描いた絵や姿を収めたフィルムは、ブグールを呼び寄せてしまう。邪神ブグールは複数の家族を悲惨な目に遭わせただけでなく、エリソンたちにも魔の手を伸ばしているのだ。
ジャンプスケアの乱用で不気味な雰囲気がなくなる
序盤はフッテージの不気味な映像や何かが起こりそうな緊迫感など、ホラー表現にそれなりの工夫が見られた。
だが、中盤からは音や映像でびっくりさせるジャンプスケアの乱用が目立ち、不気味な雰囲気や怖さがなくなってしまった。
一部のシーンでは、エリソンではなく視聴者を露骨に標的にした恐怖演出もある。けたたましいBGMやSEとともに自己主張の激しい幽霊が出てくるが、鈍感系主人公のエリソンはまったく気づかないのだ。
もはやギャグで「志村後ろ!」と言いたくなった。
ダメな部分が目につくがフッテージの映像は評価できる
癖の強い主人公エリソン、ジャンプスケアの乱用など、ダメな部分が目につきやすいホラー映画『フッテージ』。
しかし、不気味なフッテージの映像のように評価できる点もある。また、過去の栄光にすがるエリソンの哀しい姿は、人によっては感情移入してしまうだろう。
誰にでもおすすめできる作品ではないが、興味を引かれる部分があればまずは予告編でも見てほしい。