『シャイニング』人の狂気を描いたホラー映画の金字塔
ホラー映画と言われて、どんな作品を思い浮かべるだろうか? 幽霊が人を呪うオカルトホラーだろうか。
『シャイニング』はホラー映画の金字塔と称されることも多く、悪霊も出てくる作品だ。しかし、本作をホラーたらしめているのは幽霊ではなく人の狂気だ。
本作では、音と映像でびっくりさせるホラー演出はほとんどない。そのため、人によっては怖くはないかもしれない。
だが、主人公役のジャック・ニコルソンの怪演で表現された狂気はそうそう味わえない。人間の異常な言動による恐怖を感じたい人は、1度は見ておくべきだ。
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あらすじ
小説家を志しているジャックは、冬の5か月の間、オーバールック・ホテルの管理をすることになった。
ホテルでは、1970年代に管理人グレイディが孤独に耐え切れず一家心中をしたことがあった。しかし、過去の惨劇を支配人から教えられても、ジャックは気にしなかった。
ジャックは妻のウェンディ、1人息子のダニーとともにホテルでの生活を始める。だが、ホテルには人に害なす悪霊が存在していた。
執筆が思うようにいかない苛立ちと悪霊からの干渉のせいで、徐々に精神に異常をきたすジャック。ついにはホテルの悪霊に命じられるまま、ウェンディとダニーに「しつけ」をしようと斧を手に取る。
双子や過去の管理人など悪霊の棲まうオーバールック・ホテル
冬の間、ジャックたちが管理するのはオーバールック・ホテルだ。インディアンの墓場があった場所に建てられたことが序盤で語られる。
そのためか、オーバールック・ホテルには悪霊が潜んでいる。幽霊の中には、かつてホテルの管理人だったグレイディの姿もある。
ホテルの悪霊のせいで狂気に走ったグレイディは、死んだ後もホテルの呪縛から逃れることができないでいるのだ。
グレイディには妻と双子の娘もいたが、双子の娘も悪霊と化してしまう。人の人生を狂わせ、死後も支配し続ける異形のホテル。それがオーバールック・ホテルだ。
『シャイニング』は人の狂気を描いたサイコホラー
オーバールック・ホテルには悪霊が棲んでおり、悪霊による不気味なホラーシーンもある。しかし、『シャイニング』は人の狂気を描いたサイコホラーだ。
映画版『シャイニング』と言われたら、真っ先に「Here’s Johnny!(お客様だよ!)」が思い浮かぶ人も多いのではないか。ジャック役のジャック・ニコルソンが、狂気的な表情を浮かべて扉の裂け目からのぞいている1シーンだ。
ジャック・ニコルソンの狂気に満ちた表情はジャケットにも採用されており、映画版の代名詞でもある。また、ジャックの異常な言動だけでなく、狂気に支配されていく過程も丁寧に書かれている。
本作はBGMがややうるさいものの、効果音と映像でびっくりさせる演出はほとんどない。そのため、そういった怖さを求めると物足りないかもしれない。
その代わりに、ジャック・ニコルソンの怪演で薄ら寒くなるような人の狂気が表現されている。狂気にとりつかれたジャックこそが本作の恐怖の源だ。
シャイニングの意味とは?
本作のタイトルでもあるシャイニング。邦訳小説ではかがやきと称されているが、その正体はダニーの持っている超能力のことだ。
原作小説では、シャイニングが大きな意味を持つ。また、続編の『ドクター・スリープ』では、シャイニング持ちと悪霊による超能力バトルが繰り広げられる。
しかし、映画『シャイニング』だけを見ると、シャイニングに存在意義を感じない。シャイニングがなくても映画版は話が通じるのだ。
本作ではダニーだけでなくもう1人、シャイニングを持っている人物がいる。オーバールック・ホテルの料理人であるハロランだ。
だが、ハロランも意味深なだけの犠牲者でしかない。シャイニングが活かされていないのは非常に残念だ。
ホラー映画の金字塔と称されるサイコホラー
ホラー映画の金字塔と称されるサイコホラー『シャイニング』。
超能力であるシャイニングの意味のないものになっていたり、序盤は意味ありげだった双子の悪霊がフェードアウトしたりと、気になる面もある。
原作者のスティーブン・キングが本作に批判的なのは有名な話だが、映画と原作を比較したら「そりゃ怒るよね」と納得してしまう。
しかし、主人公のジャックを演じたジャック・ニコルソンの演技は非常に強烈だ。思わず恐怖心を覚えてしまう人も多いのではないだろうか。ネタにもされまくっているけど。
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