『劇場版美少女戦士セーラームーンR』は『Crystal』から入った人にも見てほしい
美少女中学生5人組が悪と戦う変身ヒロインもの『美少女戦士セーラームーン』。1992年から1997年に放送されたアニメだが、いまだに根強い人気がある。
2021年には新作の『美少女戦士セーラームーンEternal』が前後編の劇場アニメとして公開予定だ。
『劇場版美少女戦士セーラームーンR』は1993年に公開された『セーラームーン』初の映画作品だ。内容も力が入っており、上映当時のアニメシリーズの集大成とも言うべき作品になっている。
孤独と人の絆を描いたストーリーは出来が良く、大人でも感涙モノだ。『セーラームーン』好きでも『Crystal』から入った人は見たことがないかもしれないが、ぜひ見てほしい。
【予告編#1】劇場版 美少女戦士セーラームーンR (1993) - 三石琴乃,荒木香恵,緑川光 原題:Sailor Moon R
- あらすじ
- 見どころの1つは悲劇的なフィオレの存在
- 孤独と人の絆を描いたストーリー
- テーマを重視するあまり発生した問題
- 4人のセーラー戦士やちびうさにも見せ場あり
- 上映当時の『セーラームーン』シリーズの集大成
- 『セーラームーン』好きなら必見
あらすじ
セーラームーンこと月野うさぎは、仲間や恋人の地場衛と出かけた植物園で異星人のフィオレに出会う。妖花キセニアンに取り憑かれているフィオレは、旧い知り合いである衛に執着し、うさぎに敵意を向ける。
翌日、うさぎたちは妖魔にエナジーを奪われた街の人々を目撃する。妖魔を退治するも、フィオレに敗北。さらに、セーラームーンをかばって負傷した衛が連れ去られてしまう。
時を同じくして、地球に小惑星が近づいていた。この小惑星こそが、キセニアンの本拠地だった。
地球を守るため、さらわれた衛を助けるため、セーラー戦士たちは小惑星へとテレポートする。
見どころの1つは悲劇的なフィオレの存在
『劇場版美少女戦士セーラームーンR』の見どころの1つは、悲劇的なフィオレの存在だろう。
フィオレは幼少期に衛との奇跡的な出会いを迎える。宇宙をたった1人で放浪していたフィオレと肉親を事故で亡くしたばかりの衛は、孤独を分かち合う。しかし、フィオレは地球では生きられない体質だった。
別れのとき、衛から手渡された1本のバラに感激したフィオレは、今度は自分が花を送ると約束する。
衛との約束を胸に、宇宙をさ迷い花を探すフィオレ。だがその最中で、フィオレはキセニアンに寄生されてしまう。挙げ句、衛への行き過ぎた友情を利用されてしまうのだ。
果たして、フィオレはどのような結末を迎えるのだろうか。
孤独と人の絆を描いたストーリー
セーラームーンたちが人々を脅かす妖魔と戦うのはいつもどおりだ。それに加えて、本作『劇場版美少女戦士セーラームーンR』では孤独と人の絆を描いている。
オリジナルキャラクターのフィオレも孤独を抱えている。だからこそ衛との絆に執着し、うさぎを「孤独を知らない」と非難する。
だが、孤独のために寂しい思いをしたのはフィオレだけではなかった。幼いときに両親を亡くした衛はもちろん、うさぎを除いたセーラー戦士もかつては孤独だったのだ。
火野レイ、水野亜美、木野まことの3人は、人よりも秀でた能力があったために孤立していた。終盤では彼女たちが抱えていた孤独とうさぎとの絆が描かれ、視聴者の涙を誘う。
テーマを重視するあまり発生した問題
反面、テーマを重視するあまりか問題も発生している。
『美少女戦士セーラームーン』より前の話であるマンガ『コードネームはセーラーV』では、愛野美奈子に友だちがいた。
原作マンガ『美少女戦士セーラームーン』や旧アニメでも、美奈子が孤独だったという描写はなかったはずだ。
しかし本作では、他のセーラー戦士と同様に美奈子にも孤立していた過去が描写される。
このシーン自体は話の流れとしては自然で、本作の感動につながる大切なものなのだ。
だが、ストーリー展開やテーマを重視しすぎたあまり、美奈子の過去がねつ造されたのは、一部のディープなファンにとっては面白くないかもしれない。
4人のセーラー戦士やちびうさにも見せ場あり
『劇場版美少女戦士セーラームーンR』では、主人公のうさぎ、キセニアンに操られるフィオレ、フィオレと深い関わりのある衛が特に重要な人物だ。
アニメやドラマでは残念なことに、登場人物が増えると重要な人物以外の描写がおざなりになることがある。
しかし本作では、上記3人以外のセーラー戦士にもしっかりと見せ場が与えられている。そのため、4人の戦士のファンも安心して見ることができる。
さらにセーラー戦士だけでなく、非戦闘員のちびうさにも見せ場がある。
本作のちびうさは戦闘には不参加のため、他のメンバーと比べると出番が少ない。しかし決して空気ではなく、短いながらも印象的なシーンがしっかりあるのだ。
上映当時の『セーラームーン』シリーズの集大成
本作はテレビアニメ『美少女戦士セーラームーンR』の劇場版だ。そのためか、フィオレのキャラデザは『R』に登場した人物を連想させる見た目をしている。
さらに、無印とも言われるアニメ『美少女戦士セーラームーン』の要素も含まれている。劇場版『R』は上映当時のアニメシリーズの集大成とでも言うべき作品なのだ。
最初の戦闘では、無印の必殺技であるファイヤー・ソウルやムーン・ティアラ・アクションなども使われる。終盤では意外な無印要素もあり、シリーズファンにとっては嬉しいサプライズだろう。
『セーラームーン』好きなら必見
初の劇場版にして、当時のシリーズ集大成でもある『劇場版美少女戦士セーラームーンR』。
オリジナルキャラクターのフィオレや彼と関係の深い衛はもちろん、セーラー戦士たちにもきちんと見せ場があり、非常によくまとまっている。
新シリーズの『Crystal』から入った人には、キャラの性格や声に違和感があるかもしれない。
しかし、本作は極めてメッセージ性の高い名作であり、涙なくしては見られない。『セーラームーン』が好きな人なら必見だ。