『ハッピー・デス・デイ』ビッチが殺される1日を繰り返すループもの
殺人鬼に殺される1日を繰り返す女子大生の奮闘を描いた『ハッピー・デス・デイ』。
パッケージやポスターだけ見ると、本格的なホラーやスリラーに思える。しかし実際には、恋愛・SF・ミステリーなど様々な要素を上手く取り入れた、よくばりセットなホラーコメディだ。
映画の面白さとは関係ないが、困ったことに一部登場人物の名前が吹替版とユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンのサイトで微妙に異なる。
どちらに従えば迷ったが、この記事では主要登場人物が網羅されているWikipediaの表記で統一した。
あらすじ
誕生日の朝、主人公のツリーは男子寮にいた。見知らぬ男子・カーターの部屋に泊まっていたが、前日に酒を飲んでいたせいで覚えていない。
女子寮に戻るとルームメイトのロリがカップケーキで誕生日を祝ってくれる。しかし、ツリーはもらったケーキをゴミ箱に即シュート。なんて嫌な女だ!
その夜、パーティーに出席したツリーは、帰り道に大学のマスコットであるベビーの仮面をつけた人物に殺されてしまった――はずだった。
次の瞬間、再びカーターの部屋にいるツリー。やがて彼女は、殺されるたびに誕生日の朝に戻ること、すなわちタイムリープをしていることに気がつく。
ツリーは自身が殺される誕生日を乗り越え、明日を迎えることができるのだろうか?
最初は嫌な女ツリー
映画開始直後のツリーは、掛け値なしに嫌な女である。男をとっかえひっかえなビッチで、大学の先生と不倫までしている女子大生だ。
ルームメイトのロリが誕生日プレゼントとしてくれたカップケーキを、本人の目の前でゴミ箱に即座に捨てたりもする。
開幕早々、擁護不能なクズっぷりを披露してくれるため、最初のうちはツリーが殺されてもなんとも思わない。人によってはむしろスカッとするかも。
こんなクソッタレなツリーだが、話が進むうちになんだかかわいく思えてくるのだ。
犯人探しの最中にかなりバカなことをやってくれ、大いに腹筋を刺激してくる辺りから憎めない感じになってくる。クソッタレが愛すべきバカにジョブチェンジするわけだ。
ツリーの愛されっぷりを示すのが、試写会でのエピソードだろう。
『ハッピー・デス・デイ』のエンディングは当初、ツリーがバッドエンドを迎えるものだった。しかし、これが試写会で酷評されたため、エンディングが変更されることになったのだ。
純粋なホラーではなくコメディ要素の強い作品
ホラーとして紹介されることも多いが、『ハッピー・デス・デイ』は純粋なホラーではなくコメディ要素の強い作品だ。
例えば犯人探しのときに、ツリーはとある人物を夜に監視しようとする。それはわかるのだが、迷彩服を着て顔にペイントを塗りたくり、どこで買ったのか暗視スコープまで装着する始末。
他にも、タイムリープのせいで開き直ったのか、マッパで大学構内を歩くという奇行をかましてくる。おまえ、絶対この状況を楽しんでいるだろ!
犯人は犯人でツリーの反撃をまともに食らったり、追いかけっこの最中でずっこけたりと結構な間抜けだ。
こんな連中がメインキャラじゃ、シリアスなんて無理無理。
様々な要素を詰め込んだよくばりセット
殺人鬼に狙われるサスペンス、真相を暴くミステリーという要素だけでなく、カーターとの恋愛や隙あらば笑わせにくるコメディ、タイムリープによるちょっとしたSF要素、さらにはヒューマンドラマまである。
非常によくばりセットな映画だが、これだけ詰め込むと要素同士が喧嘩し合い、ひどい出来になるのではないかと気になるかもしれない。けれどそんなことはなく、ツッコミどころはあれど結構まとまっている。
『ハッピー・デス・デイ』をサスペンスやミステリーとして見ると、犯人探しはちゃんとできるようになっている。
ベッタベタではあるものの、ヒューマンドラマとしての魅力も十分。まさかこんな作品で目から汗が出るとは思わなかったよ。
テンポが良く痛快なホラーコメディ
ツリーのキャラやテンポの良さも相まって、見ていて非常に痛快な『ハッピー・デス・デイ』。
サスペンス・ミステリー・恋愛・コメディ・SF・ヒューマンドラマと、いろんな要素が意外にしっかりまとまっている。
コメディ要素が強く、細かい粗は勢いで押し切るタイプの映画だ。テンポの良さや笑える映画を求めている人にはぜひ見てほしいが、間違っても怖さを求めてはいけない。
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