『ドクター・スリープ』は『シャイニング』の続編だけどホラーじゃない?
スタンリー・キューブリックが監督を務めた映画版『シャイニング』は、ジャック・ニコルソンの怪演もあって、ホラー映画として非常に評価の高い作品だ。
見たことはないけど、壊れた扉の隙間から顔を出す、「お客様だよ!(Here’s Johnny!)」のワンシーンだけは知っている人も多いと思われる。
その『シャイニング』の40年後を描いたのが『ドクター・スリープ』…なのだが、本作はホラーではなく、超能力バトル系ダークファンタジーとでも呼ぶべき作品となっていた。
映画『ドクター・スリープ』US版メイン予告【HD】2019年11月29日(金)公開
- 『シャイニング』から40年後の物語
- ホラーを求めるとがっかり?
- 不気味な集団『真の絆(トゥルーノット)』
- シャイニングVS『真の絆』!超能力バトル勃発
- あんまり生かされていないタイトル
- バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!ホテルも目覚めて三つ巴
- 「君は輝け」シャイニングは絶望ではなく希望
- ジャンルは違えど『シャイニング』の続編
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『シャイニング』から40年後の物語
シャイニングのために悩み苦しんできたダンは、遠く離れたところに住んでいる少女アブラとシャイニングで交流しながら、医療プログラムに参加していた。
ある日、微弱ながらもシャイニングを持つ少年が、『真の絆(トゥルーノット)』と名乗る集団に拉致された。彼らはシャイニングを持つ者の生気を糧とし、「生気は恐怖や苦痛でより美味になる」と言う。
彼らは少年を痛めつけて生気を貪るが、リーダーのローズは誰かが自分たちを透視していることに気がついた。ローズたちを透視で見ていたのは、ダンと交流していたアブラだった。
同刻、自室にいたダンの元に、凄惨な光景に耐えられなかったアブラの悲鳴が届く。壁はひび割れ、そこには「MURDER(殺人)」というメッセージがあった。
ホラーを求めるとがっかり?
ホラーである『シャイニング』の続編である本作にも、ホラーを意識したシーンがある。最序盤でオーバールックホテルの悪霊が出てくるのがそれだ。が、正直、このシーンはあまり怖くはない。
この後も多少、ホラーなシーンはある。しかしそれも中盤から鳴りを潜めてしまい、以降はシャイニングVS『真の絆』による超能力バトルが主軸となる。
超能力バトル自体は面白かったのだが、本作にホラー要素を求めているとがっかりすると思われる。
不気味な集団『真の絆(トゥルーノット)』
黒い帽子がトレードマークの女性ローズ。彼女をリーダーとする集団が『真の絆』だ。
彼らはシャイニングの生気で生きながらえている存在であり、生気をより味わうために、シャイニング持ちの少年を惨たらしく痛めつける。
彼らが苦痛に叫ぶ少年の口から出てきた生気を貪るシーンは中々におぞましい。が、それ以上に不気味だったのが共食いをする場面だ。
彼らに言わせれば、シャイニング持ちの少年少女は減り、さらに質自体も下がっているらしい。そのせいで、『真の絆』のメンバーの1人が死んでしまう。要は栄養失調だ。
彼らは瀕死の仲間を心配する素振りを見せる。が、仲間が死んでその身体が生気となった瞬間、我先にと死んだ仲間の生気に群がるのだ。
一応補足すると、他の場面でも彼らなりに仲間を思っている描写がある。また、シャイニングの生気を十分に摂取できていないという背景もある。
それでも、仲間が死んだ瞬間に何の葛藤も見せずに生気を貪るシーンは、間違いなく不気味だった。
シャイニングVS『真の絆』!超能力バトル勃発
本作はシャイニング持ちのダンやアブラと、シャイニングを餌とする『真の絆』との超能力バトルが主軸だ。
で、この超能力バトルはどうだったかというと、結構面白かった。
本作のシャイニング、そして『真の絆』は、霊視、透視、テレパシー、サイコメトリー、幽体離脱、催眠、念力などなど、様々な超能力や霊能力を駆使する。
オススメのシーンは、アブラVS霊体ローズだ。
アブラの家を突き止めたローズが霊体を飛ばしてくるのだが、これを事前に察していたアブラは罠を張っていた。ローズに傷を負わせたうえで見事に退けたのは痛快だった。
あんまり生かされていないタイトル
『ドクター・スリープ』というタイトルだが、これはダンと勤務先のホスピスの患者とのやり取りで1回出てきただけの言葉だ。死を目前にした患者が、「眠るだけ」と語って不安を取り除いてくれたダンを称した言葉である。
上記のシーン自体はよいものだった。問題なのは、これ以降に『ドクター・スリープ』に関しての話が一切ないことだ。
個人的にはもう少しタイトルを生かしてほしかった。ダンが初めてローズに会ったときに「ドクター・スリープ」って名乗ったりとか。
バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!ホテルも目覚めて三つ巴
終盤、自分たち2人だけでローズを倒せるか疑問視したダンは、オーバールックホテルへと向かう。ホテルの悪霊を目覚めさせ、ローズにぶつけようとしたのだ。貞子vs伽椰子
バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!をした結果、とんでもない化け物が生まれた作品もあったようだが、本作ではどうなるのか!?
「君は輝け」シャイニングは絶望ではなく希望
ダンはシャイニングを持っているがゆえに悩み苦しみ、一時期はひどい生活を送っていた。
『真の絆』の犠牲者となった子どもたちも、シャイニングのために狙われ、悲惨な死を迎えた。
もしかしたら、この先、アブラはシャイニングゆえに苦しむことがあるかもしれない。
しかしそれでも、シャイニングという特異な才能があったからこそ、ダンとアブラは出会えた。数少ない同胞で、人に明かせない能力を持っているがゆえの共感や信頼があった。
シャイニングのために苦しんでいたダンは、最後の最後でアブラに「君は輝け」と言った。シャイニングは絶望ではなく希望なのだ。
これは、特異な才能に悩む子どもたちへの、キングからのメッセージでもあるのだろう。
ジャンルは違えど『シャイニング』の続編
『シャイニング』とは異なりホラー要素が少なく、代わりに超能力バトルが大きな割合を占めるのが本作『ドクター・スリープ』だ。
しかし、終盤にはオーバールックホテルが舞台となり、ダンはホテルとの因縁にケリをつける。また、シャイニングに苦しみ続けたダンがシャイニングを肯定するというように、やはり『シャイニング』の続編なのだ。
ジャンル変更に抵抗がなければ『シャイニング』のファンには、大人になったダニーが過去と向き合う姿を見届けて欲しい。
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