『シャークネード6 ラスト・チェーンソー』サメと台風を組み合わせたシリーズの最終作
サメ映画。それは「サメさえ出しときゃ後は何したって許される」という映画界における修羅の国。
『ジョーズ』や『ディープ・ブルー』のような出来のいい作品もあれば、とんでもない怪作やクソ映画もあるという、まさに魔境。
台風に乗った大量のサメが暴れまわるという『シャークネード』シリーズは、明らかに後者の映画だ。
一般人にはオススメできない、そのトンデモシリーズの最終作が『シャークネード6 ラスト・チェーンソー』。
チープなCGや雑な超展開を盛り込んだ本作は、案の定、上級者向けのサメ映画だった。
- シャークネードを倒してすべてを取り戻せ
- シリーズ未見は置いてきぼり!初っ端から超展開
- チープなCG、浮いている背景
- ラスト・チェーンソーとはなんだったのか
- サメ映画のはずがサメの印象も薄い
- 人を選ぶアホなサメ映画
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シャークネードを倒してすべてを取り戻せ
前作ですべてを失った主人公フィンは、シャークネード(サメを巻き込んだ台風)によって捻じ曲げられた運命を修正するべく、タイムトラベルを開始する。
最初に訪れたのは恐竜の時代で、前作で死んでいたはずの仲間たちと再会する。実は、彼らはタイムトラベルでこの時代に緊急避難していたのだ。
フィンは合流した仲間とともに、この時代のシャークネードを撃破する。シャークネードを撃破すると、時空を越える入り口であるタイムネードが現れた。
タイムネードへと飛び込んだ一行は、次に中世の時代へと向かう。
果たして、フィンたちは様々な時代のすべてのシャークネードを倒し、歪んだ運命を正すことができるのか――。
シリーズ未見は置いてきぼり!初っ端から超展開
本作はシリーズもので、過去作をすべて見たことを前提とした作品である。しかしそれにしても、ちょっと説明不足が過ぎやしないかと思う。
また、過去作を見ていたところで、脚本の質の悪さに由来する超展開もバンバンある。
まあ、シリーズのファンにとっては、そういう超展開もネタ的な意味で評価点なのだが。
フィンは仲間と合流していろんな時代を行くことになるのだが、その過程で描かれる仲間との別れや衝突という重大なはずの場面がかなり雑。
仲間の一人で、歴史の専門家でもある髭面のおっさん・ブライアンは、タイムトラベルへの恐怖心からアメリカ独立戦争の時代に残ることを決意する。……が、肝心の苦悩する場面がまったくないので、唐突な感じが半端ない。
シャークネードのせいで愛する祖父を亡くした女性・ノヴァについても言いたいこと自体はわかるが、伏線が見当たらないのでやっぱり唐突。
他にも様々な超展開が織り交ぜられており、とにかく上級者向け。本作、というか本シリーズにまともなシナリオ展開を期待してはいけない。
チープなCG、浮いている背景
シナリオがそれならCGはどうかというと、開幕早々すごい雑。恐竜やタイムトラベル時のエフェクトがやっつけ仕事な感じが凄まじい。一時停止してみると、雑コラか何かと思ってしまうほどのチープさだ。
雑なCGのおかげで、人が死亡するシーンも完全なるギャグと化す。まあ、死亡シーンに関してはCGだけでなくシナリオ展開や演出などのせいでもあるのだが。また、見方によっては評価点でもある。
VFXを利用したと思われる背景もところどころ浮いている。背景が妙にボケている感じがして、明らかにおかしいのだ。
そんな具合に、本作は全編通してCGや演出などの雑さも折り紙つきである。
ラスト・チェーンソーとはなんだったのか
中世の時代で、フィンはシャークネードに対抗するため、岩に刺さっていたエクスカリバーを引き抜く。
ところでこのエクスカリバー、なぜかチェーンソー仕様である。無数の刃がついたチェーンを剣の刃の周りに雑にくっつけたような、そんな感じの武器だ。
タイトルの『ラスト・チェーンソー』とはこれのことかと思いきや、まったくそんなことはなかった。出番は引き抜いた直後だけの使い捨てアイテムだった。
その後、しばらくの間、チェーンソーが出てきた記憶はない。
次のチェーンソーが出てきたのは終盤だ。これも弾切れになった後で、ちょこっと使った程度。
ラスト・チェーンソーとは本当になんだったのか。原題は『The Last Sharknado: It’s About Time』で、チェーンソーなんて出てこない。誰だ、放題つけたやつ。
一応、過去作だとチェーンソーが印象的なシーンもあった。しかし最終作の本作ではチェーンソーの影が薄いので、『ラスト・チェーンソー』という言葉に違和感を覚える始末である。
サメ映画のはずがサメの印象も薄い
サメが主役となるべきサメ映画。本作も、中盤まではサメの印象がそれなりにあった。
しかしその後は、仲間のノヴァやはるか未来で出会うクイーンという人物のような、ハチャメチャな女どもの印象が強い。そのおかげで、サメがただの小道具に成り下がっていた。
人を選ぶアホなサメ映画
本作は完全にサメ映画やクソ映画を愛する、上級者たるシリーズファン向けだろう。
繰り返すが、超展開や雑なCGが目白押しなのが本作だ。本作に整合性を求めてはいけない。
細かいことを考えず、雑な仕上がりをネタとして笑い飛ばせる人向けの作品だ。
シリーズ未見でも見てみたい、あるいはシリーズファンだけど過去作の内容を忘れてしまったという人は、まずは過去作の復習をするのがいいかもしれない。
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