マンボウ映画レビュー記

Amazon Prime Videoで見られるホラー映画を中心に、適度にネタバレしつつレビューしています。たまにOVAや小説を取り上げることも。ライブドアブログより移行作業中。

『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』ペニーワイズとの闘いの決着

『ホラーの帝王』と名高い小説家スティーブン・キングのホラー作品で、1990年に1度、テレビ映画として映像化された『IT』。ピエロの姿をした不気味な存在、ペニーワイズが最大の特徴だ。ハァイ、ジョージー

イット (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

初映像化から27年後の2017年に、新劇場版の前編『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』が公開された。そして日本で2019年11月に公開されたのが、新編の後編にして完結編の『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』。

オカルトホラーでありながら、青春時代を振り返るというノスタルジックな面も併せ持つ本作。後編単体でも楽しめなくはないと思うが、やはり少年時代を描いた前編とセットで見てほしい。

なお前編のレビューをしていないのに、後編のみレビューするという暴挙。

 


映画『IT/イット THE END』本予告 2019年11月1日(金)公開

 

 

前作から27年後、ペニーワイズが帰ってきた

アメリカのメイン州デリーでは、27年周期で子どもだけを狙った連続猟奇殺人事件が起こっていた。また、行方不明になっている子どもたちも相当数いるという。

それらの原因は、なぜか大人には見えないピエロ・ペニーワイズだった。

弟ジョージーを失ったビルを中心に、7人の少年少女たちはルーザーズクラブを結成し、ペニーワイズを撃退した――はずだった。

しかしそれから27年後、メンバーの中でただ一人、デリーに残っていた黒人のマイクは、ペニーワイズが戻ってきたことを知る。

ルーザーズクラブは「ペニーワイズが再び現れたら集結する」という約束をしていたため、マイクはメンバーに連絡を取る。

 

本作全体に漂うノスタルジー

前編の少年編は、ホラー版スタンド・バイ・ミーという意見もあるらしい。

スタンド・バイ・ミー  (字幕版)   

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  • 発売日: 2016/03/18
  • メディア: Prime Video
 

いじめとかは嫌だが、見ていて「あんな青春を送りたかった」なんて思ってしまう、ジュブナイル的な青春物語でもあった。

デリーに住んでいるいじめっ子の父子やルーザーズクラブの一部親など、やたらと異常者が多かったが。

後編の大人編に当たる本作は、大人になったルーザーズクラブが、マイクの招集でデリーに集まるところから始まる。

かつての友人との再会で盛り上がる思い出話や、それぞれの少年時代の回想など、いろいろな場面で過去を振り返って現在と対比するため、ノスタルジーを感じる。

ただ、ストーリー展開的に仕方ない面もあるが、過去と現在の対比が多いために、後編が前編の焼き増しにも感じた。

 

かつてのルーザーズクラブの現在は?

前編を見てから時間が経ったこともあり、最初は誰が誰だかわからなかった。が、子ども時代の回想が頻繁に挟まれるので、ある程度したらわかるようになった。でもやっぱり続けて見るのがオススメ。

メンバーは大人になって見た目は成長したが、内面的には良くも悪くも変わっていないところもあった。

紅一点のベバリーはクソ親父に支配されていた影響か、似たようなDV野郎と結婚していた。喘息持ちのエディは母親が過保護通り越して束縛系だったが、やはり妻にそれっぽい面があった。

しかし変化もあり、デブショタだったベンは、髭が似合う素晴らしい腹筋のナイスガイになっていて驚いた。

また、ルーザーズ(負け犬)クラブなのに、メンバーの半数が社会的立場だけ見れば勝ち組になっていた。まあ、内情まで見ると勝ち組?って人も多かったが。

 

ホラーとして見ると表現がワンパターン

オカルトホラーである本作なのだが、肝心のホラー表現がややワンパターンに感じた。音やいきなり出てくる、見た目などが豹変するなどのビックリさせる系のホラー要素が多かった。

一応、なんか出そう、ありそうで嫌な雰囲気という、静の恐怖もあるにはあった。しかし、それ以上にビックリ系の数が多く、もうちょい静と動の恐怖のバランスが良ければなあ、という感じだった。

あと生理的に気持ち悪い描写もある。序盤でルーザーズクラブが中華料理店で再会を果たすが、その際にフォーチュンクッキーから気味の悪い人面虫や触手つきの目玉が出てくる。苦手な人はちょっと注意が必要かも。

 

一部のホラー表現がギャグ

また、前編でもそういうところはあったが、一部のホラー表現がギャグになっていた。

例えば、ベバリーが以前住んでいたアパートを訪れるシーンがあり、そのときに出てくるおばあちゃんのホラー描写が「これ、笑うところ?」と反応に困った。このおばあちゃんに関しては、YouTubeの予告編で片鱗を確認できる。

他にも、エディが襲いかかってきたゾンビを撃退しようとし、不覚にもゲロを浴びるシーンがある。これもエディの反応のせいか、ギャグだった。

まあ、ペニーワイズから逃げるために、「超怖い」「怖い」「怖くない」の扉のどれかに入らなければいけないシーンは意図的だろうが。Itだけに。

 

いじめの仕返しにしか思えなかったシーンも

終盤で、人の恐怖を餌にしているペニーワイズを弱体化させるために立ち向かうシーンがあるのだが、弱体化させる肝心の方法がみんなでペニーワイズに罵詈雑言を浴びせるという、いじめとしか思えない描写だった。

元いじめられっ子たちが、いじめっ子にカッコ悪くやり返す的な。

『恐怖の克服』を描こうとしたシーンではあるんだろうが、もうちょいかっこよく恐怖に勝つという流れにできなかったのか。

 

不満はあれど、ホラーが大丈夫な人には見てほしい

とまあ、割と不満ばっかり書いたけれど、それもこれも本作への期待の裏返しでもある。細かい不満は多々あれど、それでも総合的には見てよかったと思えた。

ホラーでありながら、少年時代を懐かしむという郷愁に満ちた本作は、爽やかさと少しの切なさを残して終りを迎える。ホラーが大丈夫なら、この郷愁をぜひ味わってほしい。

一応、本作だけでも楽しめるとは思うが、本作の前に前作を見てほしい。ペニーワイズとの決着、そして少年時代の様々な思い出との向き合い方など、やはり前編とセットで見て完成する物語と感じたためだ。

合計6時間は結構キツいだろうけど。

 

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。(字幕版)
 

 

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