『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』ペニーワイズとの闘いの決着
『ホラーの帝王』と名高い小説家スティーブン・キングのホラー作品で、1990年に1度、テレビ映画として映像化された『IT』。ピエロの姿をした不気味な存在、ペニーワイズが最大の特徴だ。ハァイ、ジョージー。
初映像化から27年後の2017年に、新劇場版の前編『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』が公開された。そして日本で2019年11月に公開されたのが、新編の後編にして完結編の『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』。
オカルトホラーでありながら、青春時代を振り返るというノスタルジックな面も併せ持つ本作。後編単体でも楽しめなくはないと思うが、やはり少年時代を描いた前編とセットで見てほしい。
なお前編のレビューをしていないのに、後編のみレビューするという暴挙。
映画『IT/イット THE END』本予告 2019年11月1日(金)公開
- 前作から27年後、ペニーワイズが帰ってきた
- 本作全体に漂うノスタルジー
- かつてのルーザーズクラブの現在は?
- ホラーとして見ると表現がワンパターン
- 一部のホラー表現がギャグ
- いじめの仕返しにしか思えなかったシーンも
- 不満はあれど、ホラーが大丈夫な人には見てほしい
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前作から27年後、ペニーワイズが帰ってきた
アメリカのメイン州デリーでは、27年周期で子どもだけを狙った連続猟奇殺人事件が起こっていた。また、行方不明になっている子どもたちも相当数いるという。
それらの原因は、なぜか大人には見えないピエロ・ペニーワイズだった。
弟ジョージーを失ったビルを中心に、7人の少年少女たちはルーザーズクラブを結成し、ペニーワイズを撃退した――はずだった。
しかしそれから27年後、メンバーの中でただ一人、デリーに残っていた黒人のマイクは、ペニーワイズが戻ってきたことを知る。
ルーザーズクラブは「ペニーワイズが再び現れたら集結する」という約束をしていたため、マイクはメンバーに連絡を取る。
本作全体に漂うノスタルジー
前編の少年編は、ホラー版スタンド・バイ・ミーという意見もあるらしい。
いじめとかは嫌だが、見ていて「あんな青春を送りたかった」なんて思ってしまう、ジュブナイル的な青春物語でもあった。
デリーに住んでいるいじめっ子の父子やルーザーズクラブの一部親など、やたらと異常者が多かったが。
後編の大人編に当たる本作は、大人になったルーザーズクラブが、マイクの招集でデリーに集まるところから始まる。
かつての友人との再会で盛り上がる思い出話や、それぞれの少年時代の回想など、いろいろな場面で過去を振り返って現在と対比するため、ノスタルジーを感じる。
ただ、ストーリー展開的に仕方ない面もあるが、過去と現在の対比が多いために、後編が前編の焼き増しにも感じた。
かつてのルーザーズクラブの現在は?
前編を見てから時間が経ったこともあり、最初は誰が誰だかわからなかった。が、子ども時代の回想が頻繁に挟まれるので、ある程度したらわかるようになった。でもやっぱり続けて見るのがオススメ。
メンバーは大人になって見た目は成長したが、内面的には良くも悪くも変わっていないところもあった。
紅一点のベバリーはクソ親父に支配されていた影響か、似たようなDV野郎と結婚していた。喘息持ちのエディは母親が過保護通り越して束縛系だったが、やはり妻にそれっぽい面があった。
しかし変化もあり、デブショタだったベンは、髭が似合う素晴らしい腹筋のナイスガイになっていて驚いた。
また、ルーザーズ(負け犬)クラブなのに、メンバーの半数が社会的立場だけ見れば勝ち組になっていた。まあ、内情まで見ると勝ち組?って人も多かったが。
ホラーとして見ると表現がワンパターン
オカルトホラーである本作なのだが、肝心のホラー表現がややワンパターンに感じた。音やいきなり出てくる、見た目などが豹変するなどのビックリさせる系のホラー要素が多かった。
一応、なんか出そう、ありそうで嫌な雰囲気という、静の恐怖もあるにはあった。しかし、それ以上にビックリ系の数が多く、もうちょい静と動の恐怖のバランスが良ければなあ、という感じだった。
あと生理的に気持ち悪い描写もある。序盤でルーザーズクラブが中華料理店で再会を果たすが、その際にフォーチュンクッキーから気味の悪い人面虫や触手つきの目玉が出てくる。苦手な人はちょっと注意が必要かも。
一部のホラー表現がギャグ
また、前編でもそういうところはあったが、一部のホラー表現がギャグになっていた。
例えば、ベバリーが以前住んでいたアパートを訪れるシーンがあり、そのときに出てくるおばあちゃんのホラー描写が「これ、笑うところ?」と反応に困った。このおばあちゃんに関しては、YouTubeの予告編で片鱗を確認できる。
他にも、エディが襲いかかってきたゾンビを撃退しようとし、不覚にもゲロを浴びるシーンがある。これもエディの反応のせいか、ギャグだった。
まあ、ペニーワイズから逃げるために、「超怖い」「怖い」「怖くない」の扉のどれかに入らなければいけないシーンは意図的だろうが。Itだけに。
いじめの仕返しにしか思えなかったシーンも
終盤で、人の恐怖を餌にしているペニーワイズを弱体化させるために立ち向かうシーンがあるのだが、弱体化させる肝心の方法がみんなでペニーワイズに罵詈雑言を浴びせるという、いじめとしか思えない描写だった。
元いじめられっ子たちが、いじめっ子にカッコ悪くやり返す的な。
『恐怖の克服』を描こうとしたシーンではあるんだろうが、もうちょいかっこよく恐怖に勝つという流れにできなかったのか。
不満はあれど、ホラーが大丈夫な人には見てほしい
とまあ、割と不満ばっかり書いたけれど、それもこれも本作への期待の裏返しでもある。細かい不満は多々あれど、それでも総合的には見てよかったと思えた。
ホラーでありながら、少年時代を懐かしむという郷愁に満ちた本作は、爽やかさと少しの切なさを残して終りを迎える。ホラーが大丈夫なら、この郷愁をぜひ味わってほしい。
一応、本作だけでも楽しめるとは思うが、本作の前に前作を見てほしい。ペニーワイズとの決着、そして少年時代の様々な思い出との向き合い方など、やはり前編とセットで見て完成する物語と感じたためだ。
合計6時間は結構キツいだろうけど。
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